わたしは、ウィリーバグ(乗用玩具)をむすめの1歳の誕生日プレゼントにしました。
1歳くらいのこどもへのプレゼントとして、
- 歩行器
- 手押し車
- 乗用玩具
などがよく候補にあがりますが、実際にはどれがいいんだろうと迷ってしまいますよね。
歩行器が赤ちゃんによくないと聞くけれど、なんで??
赤ちゃんのからだの発達ってどんな風になるの?
そんな疑問について、こどもの療育などのサポートも行う作業療法士の視点で、なるべくわかりやすく解説してみたいと思います!
作業療法士(OT)とは→こころと身体のリハビリテーションを行う医療職。わたしの本職です。詳しくは『るあのプロフィール』へどうぞ☆
この記事では、
- 赤ちゃんのからだの発達
- 歩行器や手押し車の注意点
- なぜ乗用玩具がおすすめか
- いちおしの乗用玩具
について、わかりやすく説明しています。
お子さんに何を買おうか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください!
もくじ
歩行器・手押し車はなぜよくないの?まずは赤ちゃんの発達を知ろう
ここでは、赤ちゃんのからだの発達について、簡単にまとめておきたいと思います。
赤ちゃんは胎内では羊水にぷかぷかと浮かんでおり、重力の影響が少ない環境で育っていきます。
なので、新生児のからだはとても柔らかく、頼りないですよね。
赤ちゃんは胎内から出るとすぐに重力にさらされます。
無重力状態から、急に地球の重力で押さえつけられるわけです。
うまれたての赤ちゃんは、寝て起きて泣いて、おっぱいをのんで少しからだを動かしているだけにみえますが、日常生活をするだけで超ハードな筋トレしているようなものなんですね。
こうして重力に逆らって動いているうちに、徐々に成長して
と、1年の間にどんどんステップアップしていきます。
赤ちゃんはどうやって動けるようになるの?
それでは、どういう流れでステップアップしていくか、例にあげて少し説明してみたいと思います。
赤ちゃんは外の世界に興味を持っています。おなかも空きますし、ミルクも飲みたいです。
そのために、まずは重たいあたまを支えることからスタートします。
ミルクも上手に飲めないし、見たいものもみられません!
生まれてすぐの赤ちゃんができることは少ないです。
- くわえさせると精一杯ミルクを飲む(吸てつ反射)
- 手や足にふれたものを握ろうとする(把握反射)
- 伸びをする→首の向きが変わることで手足が一緒に動く(姿勢反射)
うまれた当初は、このような原始反射という脳のシステムに助けられて生活しているんです。
原始反射がおこると、自動的にからだがうごきます。
それが自分でからだを動かせるようになることのきっかけになります。
そうこうしているうちに、少しずつですが身体が重力に慣れて筋力がついてきます。
自分のからだの動きを感じたり、少しずつからだを動かしてみることでどんどん脳や神経も成長していきます。
そして、生まれてから4~5ヵ月たった頃にようやく首が座るというわけです。
赤ちゃんがんばった!
首が座るということは、首から肩周辺の筋力がつき、重たい頭を支えられるようになったということです。
頭が支えられるようになると、赤ちゃんは興味のあるものを見ようと長いことあたまを持ち上げてみたり、首を自分でうごかしたりできるようになります。
それ以外にも、
- うつぶせにすると、腕で上半身をささえようとする
- からだをひねる
- おもちゃを動かすと目で追う
- おもちゃをつかむ、自分の手足であそぶ
などができるようになります。
あそびや生活の中でこれらの動作をくり返すと、さらに腕・おなかや背中・足・腰まわりの筋力がつきます。
筋力以外にも
- 自分のからだがまっすぐなのか倒れそうなのか(平衡感覚)
- どのくらいの力で腕を持ち上げるとどのくらいの高さまで手が上がるのか(関節の感覚)
- 傾いたからだをまっすぐ保つ(バランス感覚)
これらの能力もどんどん発達していきます。
このすべての成長があった上で、すこしずつ、すこしずつできることが増えていくんです。
歩けるようになるまでの流れ
それでは、歩けるようになるまでの成長について注目してみたいと思います。
大体の目安でいうと、下のような流れで成長していきます。
5ヵ月 腰を支えると座れる
6ヵ月 寝返り
7ヵ月 背を伸ばしてお座り
8ヵ月 お座りで横の物を取る
9ヵ月 つかまり立ち/はいはい
10ヵ月 つかまり立ちから座る
11ヵ月 つたい歩き
12ヵ月 数秒ひとり立ち
15ヵ月 数歩あるく
1歳前後の月齢は『つかまり立ち』から『歩行』という大きな動きを身に着ける時期になります。
ですが、個人差も大きいです。
現在9ヵ月のむすこを例にあげると、8ヵ月で自分ではいはいしだすまで、お座りができませんでした。
試しに手伝って座らせてみても、背中はまーるくなっているし、両手をついて身体を支えないと座っていられないような様子でした。
しかし、8ヵ月になってすぐはいはいをしだしてから、その1ヵ月の間に
- お座り
- ハイハイ
- つかまり立ち
- ほんの少し伝い歩き
- つかまり立ちからひとりで座る
という9~10ヵ月相当の発達段階まで一気に進んでしまいました。
かと思えば、1歳半をすぎないと歩きださないお子さんもいますし、ハイハイせずに歩きだす子もいます。
大幅な遅れがある場合は心配ですが、お子さん本人なりに成長していれば、目安の月齢がずれていてもあまり気にせず、のんびり待ってあげてくださいね。
だいじなことはひとつだけ
赤ちゃんの成長を見守るときに、とても大事なことがひとつあります。
それは、赤ちゃん本人が自分でやりだすまでじっくり待つということです。
どういうことかというと…
- 自分でお座りできない子にお座りさせる
- 自分ではつかまり立ちしない子に、つかまり立ちを練習させる
- まだ歩かない子の手を引いて、歩かせる
このようなことをしない方がよいということです。
自分でやり始める前に座らせたり、歩かせたりすると、からだに負担がかかります。
赤ちゃんは、自分が体験した感覚やからだの動きを土台に、自分のペースで成長していきます。
なぜ座ったり歩いたりしないかというと、まだからだの成長が不十分だからなんです。
筋力が足りないからかもしれませんし、バランス感覚が未熟なのかもしれません。
姿勢をしっかり保つためのおなかと背中(体幹)の筋力がまだアンバランスなのかもしれません。
理由はその子次第ですが、まだ前の段階で練習中だからしないんですね。
ということは、無理に先の動作をさせると、
- からだに負担がかかる
- 赤ちゃんが自分で練習をする機会をうばう
- 身体を緊張させることで姿勢を保っているので、身体をまもる反射がでにくくなる
などの悪影響が考えられます。
お座り、つかまり立ち、歩行といった、からだの姿勢が大きく変わるときは要注意です。
赤ちゃんは、座らせたり立たせたりするとあたらしい感覚を体験して喜びますし、親も練習させてあげようという親心で先々の運動をさせてしまいがちです。
お気持ちはよくわかりますが、どうか焦らずゆっくり待ってあげてください。
歩行器・手押し車・乗用玩具はどう違う?何がよくないの?
歩行器・手押し車・乗用玩具は1歳前後で購入候補にあがることが多いですが、からだの成長に果たす役割がまったくちがいます。
ここでは、その違いについて簡単に説明します。
歩行器について
先程もご説明しましたが、歩く練習をさせるために歩行器を使うというのは、実はとてもからだに負担がかかります。
赤ちゃんは筋力もないですが、骨なども大人と比べると柔らかい状態です。
ハイハイしかしない段階であれば、まだ立った姿勢を十分に支えることができないからだだということです。
その状態で歩行器で歩かせると、首から背骨・骨盤周囲の姿勢を支える筋肉や骨格に余計な負荷がかかってしまいます。
歩行目的での歩行器の使用が推奨されないのはこのためです。
実は、赤ちゃんは胎内から歩く練習をしているといわれています。
新生児に自動歩行という反射があるのですが、それはこの名残です。
これ以外にも、赤ちゃんは歩くために必要な仕組みをすでに脳内にもっていますので、いろいろな動きを経験して身体が成長すれば、きちんと歩けるようになります。
歩くのが多少おそくても心配はいりません。
ですので、もし歩行器を使われる場合は、ぜひ赤ちゃんの楽しみのためだけにして、時間を制限してつかっていただけたらとおもいます。
手押し車について
手押し車は自分でつかまり立ちできるようになり、伝い歩きが始まったころから使われるおもちゃです。
つかまり立ちの頃の赤ちゃんはバランスを取る能力が未熟なので、歩けるようになるまでには案外時間がかかります。
歩く練習に…とプレゼントされることも多いかとおもうのですが、これも子供の歩行の発達という観点からいうと、少しずれてしまいます。
ではここで、よちよち歩きについて簡単にご説明します。
よちよち歩きの時期、こどもはまだ上手にバランスをとることができません。
なので、足を左右に広げて間隔を広くとり、手を上にあげたり、横にひろげることでバランスをとって歩いています。
よちよち歩き独特の可愛らしい歩き方ですね。
よちよち歩きを繰り返していくうちに、だんだん大人とおなじような歩き方をするようになります。
では、手押し車で歩く場合はどうなるでしょうか。
手押し車を押す場合、手を前に出してハンドルバーをにぎり、手押し車を押して歩きますよね?
本来は腕を広げて、自分でバランスをとって歩くところを、手押し車に助けてもらってバランスをとることになります。
また、手を前に出して手押し車を押すために、身体が自然と少し前方に傾きます。
大人が台車などを押していても、同じですよね。
手押し車とよちよち歩きでは、このような姿勢の違いがあります。
というわけで、手押し車で歩くことがそのまま歩行の上達に直結するわけではないんです。
もちろん、手押し車にもよいところもたくさんあります。
- 歩くことにあまり興味がないお子さんが手押し車で歩くことの楽しさに気付く
- 子供の「ひとりで歩きたい!」という気持ちをみたしてくれる
- 手押し車を押して歩くことで筋力がつく
- 押している姿がかわいい!
などなどが考えられます。
歩行の練習と考えると矛盾があるのですが、何かを押しながら歩くという経験は歩く以外の場面にも生きてきます。
楽しい遊びの一つとして取り入れてみてください!
乗用玩具について
では、乗り物タイプのおもちゃ(乗用玩具)ではどうでしょうか。
電動タイプは座っているだけになってしまうので、ここでは足けりタイプについて書きたいと思います。
足けりタイプの乗用玩具は、乗ってあそぶことで下のような経験をすることができます。
- 足でこぐことで、座った姿勢が不安定になる
→バランス練習 - ふだん歩くのと違う筋肉をつかう
→筋力アップ - ふだんより大きな関節の動きがある
→関節の感覚 - ゆらゆらゆれるような不安定な感覚を楽しむ
→平衡感覚
これらの体験は、すべてからだを支える能力(姿勢保持能力)を高めます。
からだを支える能力は、すべての動作をささえる土台です。
単に、歩いたり走ったりするようなときだけでなく、
- 見る
- 食べる
- 息をする
- 手を使う
- 集中する
これらをおこなうときにも、とても大切になるんです。
というわけで、るあの一番のおすすめおもちゃは足けりタイプの乗用玩具です!
赤ちゃんの発達にイチオシの乗用玩具
それでは、せっかくなので、わたしのイチオシの乗用玩具をご紹介したいと思います!
ウィリーバグ
ひとつめは、わが家で購入したウィリーバグという足けりタイプの乗用玩具です。
お値段は高いのですが、
- 見た目がとってもおしゃれ
- タイヤが360度回転するので、動きがスムーズ
という優れモノでした。
かなりおすすめです!
詳しくは下の記事にまとめていますので、興味がある方は是非読んでみてください!
ロディ
ふたつめは、むすこの1歳の誕生日プレゼントにしようかとおもっているロディです。
ロディは有名なおもちゃなので、知ってはいたのですが…
実はロッキングベースという土台が売っていることを最近知ったんです!
ロディをロッキングベースにはめて膨らませると、ロディが木馬のようにゆらゆら揺れるおもちゃに早変わり。
土台があれば、1歳前の月齢の小さいうちから楽しめますし、大きくなれば土台からはずして本来のバランスボール的な使い方で、からだの成長を促せるので一石二鳥!
- ウィリーバグより対応できる年齢の幅がひろい
- 足けりタイプの乗用玩具より不安定なので、よりからだの発達をうながせる
という利点があります。
むすこだけでなく、4歳のむすめも遊べそうなので購入する気満々です!
赤ちゃんの発達を考えて、道具は上手に使ってね!
いかがでしたでしょうか?
赤ちゃんのからだの発達、歩行器・手押し車・乗用玩具について、作業療法士的な視点でまとめてみました。
どの育児グッズにもいいところと悪いところがあります。
赤ちゃんの運動の発達をかんがえると、一番おすすめなのは足けりタイプの乗用玩具ですが、歩行器や手押し車をつかう場面もあるかもしれません。
柔軟にかんがてみてください♪
歩行器や手押し車がなぜ赤ちゃんの発達によくないのかを理解した上で、お子さんの状況やご家庭の環境にあわせて、上手につかってみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
追記|もしもこどもの発達が心配になったら
もしも、この記事を読んで「うちの子の成長、すごく遅れてるんじゃないかな…」と心配になられた方がいらっしゃったら…と思ったので、追記します。
こどもの発達が心配になったら、まずは乳幼児健診で相談されてみてください。
わたしの住んでいる京都市だと、4ヵ月健診、8ヵ月健診、1歳6か月健診、3歳3ヵ月健診があります。
発達が大幅に遅れている状態であれば、ほとんどの場合これらの定期健診で引っかかります。
引っかからなかったけど心配という方は、ぜひ地域の保健センターに連絡を。
予約制で発達相談をしてくれるとおもいますので、ぜひ気軽にお電話してみてください。
京都市であればこちら→子どもはぐくみ室
必要であれば、療育などのサポートも受けられます。
一人で悩まず、どうか利用してみてくださいね。
参考文献
上田礼子(2005)『生涯人間発達学』三輪書店.